相続・資産税コラム

2014年08月17日 第317回 相続税申告を税理士に依頼せず、自分で行うことはできるか?

■相続税申告は自力でできるか?

 相続税申告を税理士に依頼せず、自力で行うことは不可能なのでしょうか?

 所得税をはじめとした各種の税金は、自分で申告して自分で払うことが前提となっています。会社員の場合、その煩雑な手続きを、会社がまとめて代わりにやってくれているだけです。自営業者の方々などが毎年春に所得税の確定申告を行うように、本来税金は、自分で計算して申告するものなのです。

 ですから、相続税申告も一般の人にできないことはありませんが、所得税とは違い、内容が難しいため多くの方が税理士に相談します。相続税申告書は全15表で構成されており、作成する必要がない表もありますが、各表で数字が連動しています。手書きで相続税申告書を作成することは、税理士でも苦労するでしょう(税理士は相続税申告ソフトを使います)。

■内容がシンプルであれば自力申告も可能!?

 多くの人が税理士に相続税申告を依頼しますが、自分で相続税申告をする人がいるのも確かです。以下のポイントに当てはまる人は、自分でも相続税申告がしやすい環境や条件が整っていると言えるでしょう。

①相続財産に不動産がなく、現金や預貯金、株式など、で構成されている
②相続税についての知識があり、書類を準備・作成するだけの時間的余裕がある

 ①について、預貯金は通帳を見ればわかりますし、株式も株価を調べればその価値は確認することができます。こうした分かりやすい財産のみが遺されている場合は、素人の方でもなんとか相続税申告を作成できるかもしれません。

 ②は、相続税申告書の作成については前提となる知識が求められます。相続税申告書の作成には、相続税そのものの知識と、財産評価の知識の2種類の側面が必要となります。
 財産評価を行うにあたっては、財産評価基本通達という財産評価の決まりがあり、これに沿って土地や建物、有価証券等の評価を行いますが、条文数も多く、高い専門性が必要となります。また、税務署に相続税の相談をするにも、税務署は平日にしか対応をしてくれません。仕事の関係などで平日に休みを取ることができないという人は、物理的な側面からも自分で相続税申告するのは難しいでしょう。

■自分で相続税申告をすることのリスクは何か?

1.税理士の署名捺印欄が「空白」に!?

 まず相続税申告書第1表の右下を見てみましょう。ここには税理士の署名捺印欄があります。相続税申告書は通常、税理士が作成することが一般的であるため、税理士に依頼せずに自分で相続税申告書を作成した人は、この税理士署名欄が「空白」になります。

 そうしますと、税務署とすると、税理士が関与せず素人の人が相続税申告書を作成している、これは何か間違いがある可能性が高いはずだ、とりあえず相続税の税務調査に行こう、という判断になってしまいます。このため、自分で相続税申告をした場合、かなり高い確率で相続税の税務調査対象になってしまいます。

2.特例の適用誤りや添付書類の失念

 相続税には、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の特例、未成年者控除、障害者控除、その他各種税額軽減特例等が数多くあります。そしてその特例や控除の一つ一つに厳格な要件や必要添付書類が定められています。最初の相続税申告から適用していないと後からは適用できない特例等もあり、その判断には専門性が必要とされています。
 このように、税理士が関与しないケースでは支払う相続税の額が過大になってしまうリスクがあります。

3.生前贈与や名義預金があるケース

 生前贈与や名義資産があるケースでは、特に注意が必要です。税務署としても、重点調査項目であり、税理士が関与していないケースでは、納税者にとって不利な指導をされるケースもあります。当初の相続税申告段階から税理士が関与していれば、納税者に不利益とならないような相続税申告書を作成することが可能となります。

■まとめ

 相続税申告を税理士に依頼せずに自分で行うことはできるのか?という質問に対しては、「自分でできる人もいるけれど、やめておいた方がいい」という回答になるでしょう。相続税申告を税理士に依頼すると、決して安くはない税理士報酬も発生しますが、それ以上に、相続税を過大に支払うリスクや相続税の税務調査、相続人間の調整等、様々な障壁があります。そのためには、安心して相談できる相続税に強い税理士を見つけることが大切ですね。

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