相続・資産税コラム
相続税を、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として一定の相続財産による物納が認められています。
次に掲げるすべての要件を満たしている場合に、物納の許可を受けることができます。
(1) 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。
(2) 物納申請財産は、納付すべき相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、次に掲げる財産及び順位で、その所在が日本国内にあること。
第1順位 国債、地方債、不動産、船舶
第2順位 社債(特別の法律により法人の発行する債券を含みますが、短期社債等は除かれます。)、株式(特別の法律により法人の発行する出資証券を含みます。)、証券投資信託又は貸付信託の受益証券
第3順位 動産
後順位の財産は、税務署長が特別の事情があると認める場合及び先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限って物納に充てることができます。
不動産を物納するケースが、多いわけですが、不動産を物納するのにはいくつものハードルがあります。以下の不動産は物納できません。
・抵当権が設定されている
・測量が終わっておらず、地積が確定していない。(確定には、隣人の協力が必要です。)
・共有になっている
・耐用年数が経過している建物
・風俗関係に利用されている
・他の不動産と一体として使われている
・所有者について争いがある
しかも、小規模宅地の特例(土地の評価額を50%~80%減額する)を強制適用されての額で物納となるので、非常に低い価格で評価されたものを物納することになり、相続税への充当金額が少なくなります。更に、審査に最大9か月もかかります。
上記の通り、使い勝手の悪い制度ですので、全相続税申告件数の1%程度しか使われていません。地価の下落傾向が止まらない以上、国も不動産で納税されては売却の手間がかかって大変なので、この制度を極力利用させないようにしているようです。